特撮×安全保障、とその他

安全保障を生業とし、特撮を愛する作者のブログです

【書籍】「新書で大学の教養科目をモノにする 政治学」 浅羽通明著 (1/2) 

こんにちは。
今回取り上げるのは、ズバリ一般教養科目です。
 
大学等で専門科目と別個に取り上げられることが多い「(一般)教養科目」。いわゆるリベラル・アーツと呼ばれるものです。
 
教養科目は、「一つの科目を深堀り」というより、基本となりそうな複数の科目を構造的に学ぶことが多く、反面、断片的になりがちに感じます(…私だけでしょうか)。
 
また、私は社会科学系を中心に専攻をしていましたが、その中でも、とりわけ政治学は簡潔にまとめる(=人に説明する)ことが難しく、捉えどころがない学問として、苦い思い出があります。
 
前置きが長くなりましたが、今回おススメしたいのは、そんな私も納得の一冊

大学の教養科目という切り口で政治学をまとめた新書(タイトルままですが)です。

https://www.amazon.co.jp/新書で大学の教養科目をモノにする-政治学-光文社新書-浅羽通明/dp/4334036295

 
なお、政治学と安全保障と直接的な関係は見えにくいかもしれませんが、政治・権力の構造、政治制度、政治課程論等は、いわば「統治」のためのハウツーと呼べるもので、根源的なところでリンクしています
 
本書は、政治経済学の講師であり叙述家の著者が、社会人の教養という視点から政治学をまとめたものです。「権力がいかにして権威付けられ、維持されるのか」という根本的な問に対して、実体論、関係論、比較論、手続論等から多角的に答える重厚な内容ながら、同時に「スラスラ読める教科書」(←一見して矛盾してそうですが…)のテイストを有しているのが特徴的です。
 

①権力の分類(米国学者 アミタイ・エツィオーニによる)

本書では偉大な学者の方々が残した学問的知恵を端的に紹介してくれています(私が直接、原典に当たるべきなのですが…)。
まずは、そのうち権力の分類について。
 
権力には大きく分けて3類型があり、㋐強制的権力、㋑報酬的権力、㋒規範的権力が挙げられます。
 
 
強制的権力とは、物理的権力による身体への処罰またはその脅迫によって服従調達することです。
 
特撮でいえば、悪の軍団ショッカーをはじめ大抵悪の組織が採用する、最もオーソドックスな方法と言えそうです。
 
最も直接的かつダイレクトなので手っ取り早くみえますが、反面、既存勢力等からは最も反発を受けてしまう方法でもあります。
 
ショッカーの企みも、露見し次第、ライダーに見つかって蹴散らされる、の繰り返しです。
 
現実の外交では、実力行使による服従の調達は最後の手段と考えられており、国同士のconflictの最終段階と位置付けられます。いわゆ戦争状態です。
 
 
報酬的権力とは、物質的利害による勧誘、利益供与(減税など)により服従を調達することです。
 
悪の組織で採用されることは多くなさそうですが、例えば、激走戦隊カーレンジャーの敵宇宙暴走族ボーゾックの怪人で、同組織内で最も偏差値が高いとされるT・T・テルリンなどはその典型といえるかもしれません。
 
テルリンは、「ボーゾックスイカ割り大会」に必要なスイカを調達すべく、子供たちに的を絞った作戦を立てます。それが、子供たちの夏休みの宿題を解くのと引き換えに、スイカを持ってこさせる、というものでした。
 
何やかんやで暴走したテルリンはカーレンジャーに倒されますが、アプローチの仕方が出色でしたので印象的でした。そもそも、八百屋(より現実的には青果市場?)を敢えて襲わないあたり、テルリンのこだわりが窺えます。
 
現実の世界では、経済的な利害関係をベースとした関係において、片方が権力を握る構造に似ているかもしれません。例えば、大国の貿易政策に翻弄され、追従を余儀なくされる小国の立場が挙げられます。
 
 
規範的権力とは、象徴的価値の操作により自らの権威を高め、自発的に服従をさせることです。
 
特撮においては、仮面ライダーV3の敵で登場したキバ男爵率いるドーブー教のように、宗教的教義と結びついた権力の発揮の例が見られます。
 
また、逆のアプローチとして、仮面ライダーに対するニセ(ショッカー)ライダーも挙げられるかもしれません。
 
改造人間として(味方らしいけど)不審な存在である仮面ライダーに似せた存在に悪さをさせることで、「正義の象徴」である仮面ライダーの規範的権力の失墜を目論んだと言えそうです。
 
現実の世界では、イデオロギー政治的主張の対立の文脈において見られる、物理的な実力行使を伴わない権力争いが類似しているかもしれません。
 
 
長くなってしまったので、続きは次の記事に回します。